インタビューウィズマネジャー

2022年4月4日

前回、マネジメントとは管理ではなく「なんとかする」と訳すとしっくりくると書きました。では「なんとかする」ためのコツはあるのでしょうか?とりわけ個々具体の話になりがちな、マネジメントの仕事において、優秀なマネジャーが実践している共通ポイントについて、考察したいと思います。

営業なら営業、開発なら開発、管理部門なら管理部門としてそれぞれが向き合っている状況、課題は異なります。また、会社ごとに抱えているシチュエーションは異なっています。しかし、異なる状況に直面しても、異動や転職をしても、マネジメントとして成果を上げ続けられる人がいるのも事実です。

彼らと話をするといくつかの原理原則や共通点があるように思います。

①一挙両得を狙う

一つ目は、1つの施策でさまざまな課題を解決しようとする(解決までいかずともいい影響を与える)ことです。

たくさんのマネジャーと話していて、リソースフルな状況で課題に取り組めているという話を聞いたことがありません。リソース不足はどこでも常に起こっています。その中で、たくさんの難易度の高い課題を解決しなければならない。それも人を通して解決しないといけない。そんな時、できるだけ省力で人の課題と仕事の課題を解決する方法を考えます。

例えば、「業務遂行を通して、人を育てる」とか、「部内のレクリエーションを企画させて、メンバーの企画力を鍛える」とか、です。前者なら、業務遂行と人材育成を、後者なら職場の人間関係と人材育成を同時に改善・強化するための施策になっています。

②全ての人生経験から学ぶ

2つ目の共通点は、さまざまな人間対応の経験を持っているという点です。

人にまつわる課題が起きた時に、優秀なマネジャーと話すと「昔メンバーでこういう人がいました」という事例がたくさん出てきます。そして驚くのは「自分の友人で〜」「昔の先輩で〜」「自分の子供に接するときに〜」と言ったように、仕事だけでなくそれまでの人生における友人や家族を含む人間関係への対処経験による事例も山ほど出てくることです。

これは人生においてさまざまなタイプの人への対応、時に失敗やトラブルを乗り越えることで自分の中に人間への対応の引き出しを増やしてきたのだと思います。

③自分の行動ルールをもつ

そして3つ目ですが、その経験をもとにした自分の中の行動ルールを持っている点です。

先ほど申し上げたとおり、個々具体の状況は異なり、対峙するメンバーも異なる人間です。そのため同じ課題は2度と起きないはずです。そのため、どんな問題でも通用する「人の問題を解決する方程式」というものは存在しません。しかし、優秀なマネジャーたちは、それぞれの状況において常に個別対応をしているのではなく、そういうケースなら「僕ならこうする」という、自分の中の行動ルール、判断、仕事観のようなものとして、整理して、言語化しているケースが多いです。

ちなみに、私が在籍していた会社でマネジメント職への登用のアセスメントで、確認しているポイントはまさに「マネジメントに対する引き出しの多さ」でした。

文章によるケーススタディですが、あなたが部長で、部下のマネジャーであるAさんとBさん、どちらを重点的にフォローしますか?という質問がありました。与件としてAさんとBさんの特徴が書かれているのですが、答えはAでもBでもどちらでもよく、その理由が大切というものでした。自分の経験と照らして、与件文から想定されるAさんはこういうことに困っているのではないか?、こういう強みや傾向があるのではないか?なので、BさんよりもAさんを重点的にフォローする。という回答が必要でした。 

自分の行動原則を磨くために

自分自身の行動原理の構築には、自分自身の経験と整理・言語化が必要です。優秀なマネジャーたちはどのように自分の原則を磨いているのでしょうか?それぞれやり方は異なりますが、やはり共通するのは、定期的に経験の棚卸しや振り返りの機会をもつという点でした。中には1日の終わりに10分間今日起きたことをメモして、定期的にそのメモを読み直すという人もいました。

平たく言えば、経験学習モデルということなのですが、自分自身の行動原則を構築するときこそ、経験学習は効果を発揮するのかもしれません。また、強いマネジャーを作るためには、1on1などで上司が壁打ち相手になり経験の整理を手伝うことが有効なのかもしれません。

筆者紹介

メガベンチャー人事責任者

HRM

略歴:

現在メガベンチャーの人事責任者。新卒でエンジニアとして入社するも、配属ガチャにより図らずも人事としてのキャリアをスタート。しかし意外にも自分にフィットしてしまい以降、一貫して人事キャリアを歩む。

グループ10万人規模の大企業から数千人、数百人まで様々な規模の組織にて、人事企画、人材開発、労務、採用、HRBPなど人事・組織領域を幅広く経験する。