若手社員離職防止!
ジェネレーションギャップを理解しよう

2021年6月14日

若手社員が定着しない、出勤が安定しないという人事担当者の方の相談が増えています。
リモート環境が所属意識を低くし、新入社員の不安も高めている面もありますが、不安を生み出す原因はそれだけでしょうか。
その原因を知ることで、先回りの離職防止対策を立てていきましょう。

入社してすぐ転職サイトに登録?!

実はこの数年で、20代の離職率はなんと2.4倍を超えていることをご存じですか?

出典:https://news.mynavi.jp/article/20200225-978636/
出典:https://news.mynavi.jp/article/20200225-978636/

2000年代には「若者の離職率は3年で3割」が話題になりましたが、現代はその比ではありません。入社と同時に転職サイトに登録する人も増えているとも。
20代の転職理由の一位(図4)は「精神的なゆとりを求めて」が最も多く全世代と比べ高くなっています。
昨年から入社時よりリモートワークを余儀なくされたことも大きく影響し、想像していたものとのギャップ、職場になじめているのかも分からないという状況がありますが、実はそれ以前から何らかの不安を感じていたことがわかります。「精神的なゆとり」極めて抽象的ですが、これが何に起因しているのかを探っていきましょう。

時代と共に変わる価値観

若手社員と現在管理職を担う世代とでは受けてきた教育も違えば、評価される事柄も違います。もしあなたが人事担当の方なら、こんな話しがよくあるのでは?

「今の若い世代が何を考えているのか分からない」という年配の社員。

「やる気がないわけではない。とくに管理職になりたいとは思っていないだけで、上司が理解をしてくれない」という若い社員。

世代別の時代背景とそこで醸成された価値観の違いを理解していないと、この溝は一向に埋まりませんし、わかり合うことは難しいでしょう。この溝を埋めるのは人事担当の方や、管理職を担う皆さんの役目ともいえます。

根性論が当たり前の昭和から、プロセス重視の平成。

50代前後の管理職に多い昭和世代は、「ティーチング」型の育成を受けてきています。根性論、そして常に目に見える結果を求められた世代です。途中のプロセスではなく、とにかく結果を出したものが評価され、給料が上がる。ハイブランド等に代表されるように「所有すること」が豊かであるとされた時代です。

平成に移るとどうでしょう。平成世代は結果よりもプロセスを評価された世代。バブルが崩壊し、就職氷河期という言葉も生まれ、経済が停滞、いくらがんばっても結果が見え難い情勢がありました。その結果、評価では何を見られたか。「プロセス」が大切だという価値観が生まれPDCAサイクルで、なぜこうしたのか、失敗してもそれがなぜできなかったのかを問いかけるような「コーチング」の要素が入った育成が主流となったといえるでしょう。

そして、現代は、、、、

令和は承認が何よりも先

SNSが当たり前の世代は、常にSNSを介して「いいね!」という承認を得ることが当たり前の世代ともいえます。「承認が何よりもまず先」にないと不安が先立ってしまう。このことが非常に特徴的ではないでしょうか。

「承認を得るために」仕事をしてきた昭和世代と、「承認がないと動けない」若手社員。これは単純にどちらが良い悪いというものではなく、時代背景が生んだ価値観の決定的な違いです。

このことを念頭において、この価値観の違いを先輩社員に理解させ、若手社員の不安を軽減するような育成プログラムを作らなければ定着は難しいでしょう。

グーグル社が強いチーム作りに必要だと提唱した「心理的安全性」というキーワードがこの1年で波及したのも、このような背景があるからと言えます。心理的安全性についてここで詳細は述べませんが、組織の中で自分の考えや意見を安心して発言できる、失敗しても大丈夫と感じられる状態にあることです。

心理的安全性を醸成するには

時代背景の違いがあることは分かったとはいえ、社員にSNSのように「いいね!」ボタンを押すことが出来るわけではありません。
私が長年カウンセリングをしている中で、不安が強い方に多く見られる特徴が、業務上の指導や注意を受けた際に、「行動」ではなく「存在」を否定されたように感じてしまう方が多いというものです。

指導した社員からすると、存在否定をしているつもりはないので、注意したことで社員のパフォーマンスがガクッと落ちてしまうと、どう指導してよいかわからなくなってしまいます。指導の際には、「NG行為」の指摘よりも、「望ましい行動」を伝えフォローアップを十分にすることが大切です。身近な具体例としては、公衆トイレで「汚さないで」ではなく「きれいに使ってくれてありがとう」という張り紙をみませんか?
脳の特性で、否定されると「行動が強化されてしまう」という事があります。触らないで!と伝えると余計に気になって触りたくなってしまうようなことを表します。

失敗してもいい、一緒に考えるというような姿勢が非常に大切なのですが、具体的に何をすればよいかとなると難しく考えてしまいがち。

今回は、明日から誰でも簡単に安心感を与えられるコツをお伝えします。

すぐにでもできる安心を与えるコツ

  1. 挨拶やチャット、メールに即応する
  2. 笑顔をこころがける
  3. 意にそぐわない意見が出てきても、まずは聞く
  4. 自分が失敗した時には素直にあやまる
  5. 今の業務が一体何につながるのか、理念や想いを話す機会をもつ
  6. 日頃から感謝を伝える

当たり前のことで拍子抜けしましたか?
私は普段から年配の管理職の方々から相談を受けますが、このことを実践出来ているか聞くと、多くの方が意識しては出来ていないと振り返られます。
なぜか。そのような環境が当たり前ではない時代を生き抜いてきたから習慣になっていないのです。
一見簡単なことの積み重ねが出来るか出来ないかで、安心感、所属感が大きく変わります。リモート化が進んでいるからこそ、小さなことを丁寧に実践していく必要があるのです。

まずは、時代背景の違いを知る事、伝えることから始めましょう。このジェネレーションギャップを埋めなければ若手社員に対して時代にそぐわない教育を行い、結果的に大切な人材を失う事につながりかねません。

筆者紹介

P&L Associates 合同会社 アドバイザー精神保健福祉士

橋詰 牧

青山学院大学卒。20代は飲食店マネージャー。メンタルヘルス業界に関心を持ち2010年精神保健福祉士資格を取得。精神科、生活保護のケースワークを経て2012年より企業内カウンセラー、第一種衛生管理者として社員相談、メンタルヘルス研修講師、ストレスチェック、障がい者雇用のコンサルティングに携わる。大手通信会社に所属する傍ら、個人でもカウンセリング、コーチング等を行っている。