「あなたは何屋だ?」と聞かれて、納得いく説明ができなかった人のリアル

2022年8月10日

先日、友人と食事に行ったのですが(ごちそうさまでした)、2軒目で出会った(アルコールの入っている)そのお店の店長兼オーナーからいただいた「あなたは何屋だ?(何の仕事をしてるんだ?)」という問いに想定外にあたふたしてしまいました・・・。
今回は、その際に気づいてしまった「自分が何屋なのか説明できなかった」という背景にあるリアルをテーマにお届けします。

その前に・・・少しだけ考えてみてください。

初対面かつあなたの業界とはつながりの薄い人から

「あなたは何屋だ?」

と聞かれたとき、あなたはどのように答えるでしょうか?
どのような言葉を選ぶのでしょうか?

何屋?の答えが職種・役割だった・・・

さて、あなたはどのようにこたえましたでしょうか?

ちなみに私は、最初にこう答えました。

「人事屋です」

店長の何屋に引っ張られ、自分の職種に屋をつけて答えてみたのですが

残念ながら(当然?)店長の反応(表情)は「わかんねぇよ」でした。

少し考えて、次に出した答えは

「採用屋です」

やはり店長の反応は変わらず・・・

そして次に出した答えは

「組織を強くしている屋です」

と、人事の人が好きな言葉(?)でおさめてみたのですが

自分の中でもしっくりきておらず、もちろん店長は「何言ってんだ?」という表情になっていました・・・。

なぜ、こんなシンプルな問いに対して納得できる答え(言葉)がでてこなかったのだろうか・・・

「何屋なのか?」という問いに対して納得できる答えがでなかったのはなぜか?

家に帰る道すがら、この頃にはすでに店長の表情はどうでもよくなり(すみません・・・)
「納得できる回答ができていなかったのはなぜなのか?」をもやもやと考えてみると考えが2つほどまとまりました。

まず思いついたのは、そもそも説明がしづらい仕事だということ。

一般的に人事や経理など間接部門と呼ばれる仕事は直接的な価値を生み出していないため説明しづらかったり、その内容もその仕事に携わっていない人にはなじみがなかったりすることが多いと思います。
例)自動車開発(エンジニア)の方であれば、「私はクルマを創っています」の一言でイメージが付くかと思います。

そして、もう一つが「仕事の価値の見えづらさ」でした。
その大きな要因として「組織構造」と「目的意識」があると思いました。
今回はこの2点についてご紹介したいと思います。

<組織構造により仕事の価値が見えづらい>

多くの企業では人事、開発、営業などの機能(部門)ごとに分かれた組織になっています。各機能担当者は、その分野に集中して取り組むことができるため効率が良く、ナレッジ・ノウハウもたまりやすく、生産性が高い点がメリットとして挙げられます。が、一方で、デメリットもあります。

1)全体観がわかりづらい

例えば、私は人事部門に所属し、エンジニア採用という仕事に取り組んでいるのですが、採用した人が配属された開発部門でどのような活躍をしているのか?どのような価値を生み出しているのか?理解することは容易ではありません。

2)情報共有しづらい

それならば、情報を取りに行けばよいのでは?という声が聞こえてきますが、日々採用業務に追われてしまうと現場に赴き理解力を高めるという短期的な価値を得づらい行動を制限してしまいがちですし、周りからも「そんなことやる暇あれば目の前の仕事を片付けてください」という声が返ってきそうです・・・

何よりも部門の壁を越えて何のために?何を?どのように?その結果生み出される成果(価値)についてじっくり聞くことは容易ではありません。

これらの要因から「仕事の価値」の理解がしづらくなっていると考えました。

<目的意識が弱いため仕事の価値が見えづらい>

このような言葉を聞いたことはありませんでしょうか?

「手段ややる事(How)ばかり考えていてはいけません。何のために?(What)-なぜやるのか?(Why)を考えましょう」

ビジネス書コーナーの本を手に取れば必ず目にする「What」に関する内容
Whatに関するわかりやすい説明は、「レンガ職人」の寓話に譲るとして

役割が細分化された組織、ルーティン系のタスクが多く、日常的に忙しい状況で働いている組織だとHowに溺れてしまう傾向は強いと思います。

「私は人事の仕事をしています」
「私は採用の仕事をしています」
「私は組織を強くする仕事をしています」

などの言葉を選んでしまう背景にはこのような日々の業務の捉え方が矮小化されているという事情があるような気がします。

さらに外資系企業の採用担当者のエピソードとしてこのような話があります。

『(日系企業で働いてきた人に)「あなたは、仕事を通してどのように社会に貢献がしてきたのですか?」と問うとなかなか答えられず、自分の肩書や経験談に終始することが多いんです』

仕事や働くということに対して、実態よりも小さく捉えたり、本質的ではない部分に強く意識を向けてしまったりすることが多くなり(Howへの依存)、その結果としてそもそも、なぜこの仕事が存在しているのか?この仕事の結果として組織の何につながっていくのか(Whatへのつながり)が希薄になっている・・・とも言えるかと思います。

その結果“何屋なのか”を語ることができなかった

まとめますと・・・

「あなたは何屋なのか?」という問いに対して、納得できる答えることができなかったのは、外部要因(組織構造)、内部要因(目的意識)により自分の仕事を矮小化してしまっていたからだといえるのではないでしょうか?

自動車で例えると、
自動車の動力源としてエンジンがあります。エンジンという仕事を任され、エンジンとして、エネルギー・スピードを一生懸命生み出すものの、その提供価値に集中するがあまり、快適に目的地まで到達するという自動車としての価値を忘れてしまい、気づけば滑らかに走ることができないギクシャクした車になっているという状態かもしれません。(個人的にはこういう車が少なのですが・・・)

最後に・・・

ここまでお読みいただきありがとうございました。
最後にみなさんに問いを残して今回のコラムを閉じたいと思います。
「仕事を通して社会に対してどのような貢献をされてきましたか?」
「これからどのように貢献していきますか?」

これらが欠如した「人事、採用、組織を強くする」という言葉には自分自身を含めた誰の耳にも届かないのかもしれません。

組織のために一生懸命働いているなら、自分の提供する価値もしっかりとCareしたいものです。

働くってさ・・・、そういうことだと思う。

筆者紹介

自動車メーカー AssistantMgr

岩本 洋太郎

経歴:

自動車メーカーでHRとして仕事をしています。仕事内容は新卒採用です。年間200~300名ほどの採用を行っています。一方で、人材育成・組織開発への強い興味関心から友人の企業の支援も行っています。(趣味と経験値を積むべくプロボノ的に行っています)