「 1on1」の落とし穴①
リモート環境での1on1は効果的?

2021年3月24日 コラム

 見えない、聞こえない、言えないというリモートワークの環境が社員のメンタルヘルスにおいては大きな影を落としていますが、社員の不安を少しでも拭うため、またモチベーション低下防止の為にリモートワークをきっかけに「1on1」を導入したという声を多く聞くようになりました。昨年の調査では日本企業の約4割が導入しているという結果もあります(※1)。一方で「1on1」を導入したものの効果をイマイチ感じられないと言う人事担当者の方のお話も聞きます。(※1:日本の人事部「人事白書調査レポート2020」)

 実際私が受けた相談の中でも「1on1」に苦痛を感じているという社員の声がちらほら。むしろ社員のモチベーションを下げてしまった。「1on1」がきっかけで、ハラスメント案件になってしまったという最悪なケースも!メンタルヘルス対策のつもりがメンタルダウンをさせてしまったら本末転倒です。事例を紐解きながら、導入した「1on1」をより効果的なものにするためのポイントをお伝えします。

自己流1on1が横行!?

NG事例①

緊急事態宣言以降「1on1」が導入されたというAさん。

「上司は “話を聞くよ” “気兼ねなく話してよ” といいますが、、、、いざ話を始めると “どうしてそう思うんだ” “こうしたほうがいいんじゃないか?” とプレッシャーをかけてくる。最後にどう思う?と聞いてくるけれど、結局自分の意見を通して終わり。正直しんどいし、話す度に疲れます」

NG事例②

「1on1」が毎週30分導入されているBさん。

「上司が気をつかって、話をしやすくしようと一生懸命なのは伝わってくるのですが、、、、。振り返ると毎回内容は表面上の業務報告と雑談。業務報告ならメールやチャットでもいい。関係のない上司のプライベートな話も聞きたくないし、聞かれたくない。毎週話す事もないし、仕事の時間に充てさせてほしい」

2つの事例の共共通点は「社員の時間ではなく、上司の時間になってしまっている」ということ。

 上司が自分本位に終始話をしている情景が浮かびますよね。結果として部下は大切な時間を奪われた、聞いてもらえないという不満を抱えることとなります。事例②のようなケースも、ありがちです。リラックスさせようと話しやすい空気を作るのはよいですが、終始楽しませること、話を聴かせることが「1on1」の目的ではないことは明白です。

学ばれている人事担当者の皆さんはこう思うはず。「そんな基本的な事もわかっていないのか?」「そこから教えなければいけないのか?」と。

 ですが現実として浸透しているのは「1on1」という言葉のみ。リモート環境の対応に追われ、「1on1」の実施の仕方について十分な研修もなく慌てて導入した結果、「自己流1on1」になっているケースが多いのです。

「1on1」成功のポイント

① 社員を信じて任せる姿勢

 任せるべきとわかっていても口を挟みたくなってしまうケース、多いですよね。忙しいからこそ、答えを教えたほうが良いと早合点しがちですが、その結果何が起こるかというと「指示をもらわないと動けない社員」が生まれてきます。

 リモート環境だからこそ、社員の「自主性」「主体性」を育てなければ、生産性はどんどん下がっていきます。

 アドバイスも、「こうしてみては?」と直接行動のアドバイスをするより「こんな見方もあるけど、どう思う?」と別の視点を与え再度本人に考えてもらうような質問をしていくことがポイントです。

 立ち位置を自分で確認させる

 リモートワーク環境下では、一人で「作業」を行っているような感覚に陥りやすい為、業務が捗っているのか、いないのかという漠然とした不安を抱えやすいというのも一つの特徴です。

 今取り組んでいることを社員自身に説明をしてもらい、「進捗確認=立ち位置確認」を自ら行ってもらうことが大切です。見通しが立たないような錯覚に陥りやすい為、今までより短いスパンでの目標、ゴール設定していくことも有効でしょう。その際に、何から始める?いつからやるか?などより具体的な行動まで社員自身で考えてアウトプットしてもらうと良いでしょう。

 自分自身で確認をしてもらうことで、社員がプレッシャーを感じるリスクは減りますし、自分で考えたことを実行していくことには「やらされている」という感覚を持ちません。目標を達成した時の充足感も倍になるでしょう。

 褒め上手が部下を伸ばす

 NG事例①のように社員の現在の状況を聞いて、出来ている/出来ていないという評価や、こうすべきという指示をするのはNGです。

 メンタルヘルス対策、そして組織へのエンゲージメント向上につながるFBで大切なことは、感謝と労いの言葉をかけることです。特にプレイングマネージャーが多い組織では、効果は高いでしょう。

 褒め方にもコツがあります。

 漠然とよくやっているね、いつもありがとうではなく、小さなことでも構いません具体的なやった行動に対して褒める、感謝することです。

 具体的な行動を触れて褒められると、「見てもらえていないと思っていたけれど、自分のことを見てくれている。」と強い安心感が生まれます。

 漠然と何度も褒めているだけだと、上っ面のお世辞、パフォーマンスにしか捉えられなくなってしまいます。

 褒め上手になることで、認められている、役に立っているという想いが社員の安心感、パフォーマンスの向上に繋がります。

最後に

 答えは残念ながらNOです。「1on1」の成果が感じられていない人事担当者の方は、実施者への教育を今すぐに検討するべきでしょう。適切な1on 1が実施され普及していけば、本来の目的である相談しやすい環境づくりの醸成がなされ、社員が自ら声をあげてくれるようになり、1on1の効果が上がる一方、実施回数や所用時間は短縮されるはず。

 ですが、十分な教育をしても、「知る」「解る」「出来る」の階段を全員が上がれる訳ではありません。だからこそ社員の声にならない声を拾うような仕組み、時代に適した複合的なメンタルヘルスケアの仕組みを作らなければならない時が来ています。

 次回はハラスメントに繋がってしまった事例を取り上げ、オンライン1on1特有のリスクについて取り上げていきます。

筆者紹介

P&L Associates 合同会社 アドバイザー  精神保健福祉士

橋詰 牧

青山学院大学卒。20代は飲食店マネージャー。メンタルヘルス業界に関心を持ち2010年精神保健福祉士資格を取得。精神科、生活保護のケースワークを経て2012年より企業内カウンセラー、第一種衛生管理者として社員相談、メンタルヘルス研修講師、ストレスチェック、障がい者雇用のコンサルティングに携わる。大手通信会社に所属する傍ら、個人でもカウンセリング、コーチング等を行っている。