リモートワークに警鐘!
新時代のメンタルヘルス対策

2021年1月19日 コラム

 働き方改革、新型コロナウイルス対策によりリモートワーク環境が一気に普及しました。それに伴い労働者が抱えるストレス要因も激変し、メンタルヘルス対策も従来型のラインケアでは十分に行き届かず、メンタルヘルス不調を訴える社員からの相談だけでなく、対応に追われる企業の人事担当者の方、管理職の方からの相談も増えています。

一体何が起きているのでしょうか。

リモート環境下におけるメンタルヘルスケアの特徴

「前触れなく、突然表面化する」

 最近多くの人事担当者の方から、「急にパフォーマンスが落ちた社員が何人もいる」「問題なく見えていた社員から突然退職を切り出された」「社員から鬱の診断が突如郵送され、休職に入ってしまった」というような、予兆がなくメンタルヘルス問題が表面化するという相談が増えています。トータルでもメンタルヘルスに関連する相談件数は右肩上がりに増え、管理職の方からもどう対応したら良いかという具体的な相談が増えています。

メンタルヘルス問題が突然表面化する背景

 リモート環境によってメンタルヘルス問題が突然表面化するようになってしまったのは、以下の3つの背景が影響しています。

見えない

 うちの会社はオンラインでMTGを頻繁にやっているし、社員の顔は見ているから大丈夫!と思っていませんか?

 安心してはいけません。対面よりも画面上では細かい表情まで見えないものですし、大勢参加するオンライン会議であれば、より情報は得難くなります。

 MTGでは緊張感を持って参加しているので、実際の社員の状況は十分にわかりません。笑顔で話していたとしても、それで大丈夫という確証はどこにもないのです。

 普段オフィスにいる時のことを想像してください。

 今までは、社員の仕事に向かっている様子や同僚とのやりとり等、何気ない「様子」や「ふとした表情」「声のトーン」などから変化に気づいていましたよね。

 だからこそ「どうした?何かあった?」と声もかけられていたのではないでしょうか。

言えない

 オフィスであれば、「ちょっと聞いてもいいですか?」と時間をとってもらうほどの相談ではないけれど、聞きたいことを聞ける環境がありました。

 「うちの会社はチャット機能をつかっていつでも聞ける整備しているよ」

 危険です。こんな声が多く届いています。

 メッセージやチャットのやり取りで誤解が生まれたり、結局伝わらなくて後で電話やオンラインに切り替えなくてはならない、イライラしてしまった、TPO問わずに連絡くることにストレスを感じる。と、便利なように思える反面、メンタルヘルスには悪影響を及ぼしていることが多いのです。

 オンライン会議で流れを切ってまで聞くのはなんだか憚れて言えないという方も多くいます。

 リモート環境は社員の小さな悩みの種が、気づかれないまま大きな問題に育ってしまいやすい環境にあることを念頭に置いてください。

聞こえない

 オンライン会議に際して「家族がいるので物音が気になり、個室もないため車の中で会議に参加している」という人もいらっしゃいました。そんな状況ではネット環境が整わずに途切れ途切れになることもあるでしょう。そんなときどうしていますか?

 「後で共有します」「今日はいいよ、今対応している案件全て終わってからチェックするよ」

 リモート環境ではネット環境の不安定さがなくとも、報告や評価が結果のみになりやすいという特徴があります。

 ここでも社員が不安や孤独に陥りやすい状況が生まれ、社員も終わってからでいいやと声を発っすることが少なくなり、結果的にモチベーションが落ちていきます。

 このように紐解いていくと、メンタルヘルスの課題が突然表面化しているのではなく、リモート環境により今までの対面での職場環境では気づけていたことを拾いあげらなれなくなってしまった、ストレスが恒常的に溜まりやすい環境であることが大きな要因であることが明らかにわかるでしょう。

リモート環境におけるメンタルヘルス対策のポイント

こまめな確認

 「見えない、言えない、聞こえない」が何を生み出すか。

 強い「不安」です。1on1で相手の表情が見えているという状況であったとしても、月に一度では不十分です。もしかしたら家族以上に顔を合わせていた人たちと、月に1回1時間話すだけと考えてみてください。そのインパクトはいかがでしょうか?

 1on1でなくともオンラインで接する頻度をあげていきましょう。画面上で読み取れることとしては、細かな表情まで見えなくとも、身だしなみ、髪型、声のトーンで変化が読み取れることもあります。

アイスブレイクタイムをつくる

 会議前で雑談をする場を設けるとよいでしょう。ただ、10分前にオンライン会議室を開けておきますよ〜だと集まらないので、アイスブレイクタイムを設けてから、今日の議題に入っていくことが望ましいです。会社によってはオンラインでランチ交流会を開いている会社もあります。大切なのは、オンラインで話しやすい雰囲気を作ることで、そのためにはファシリテーターの役割が重要になってきます。

 ファシリテーターが上手に場を回して、ちょっとした質問で状況を把握する、話をふって聞き取ることで、些細なことを言いにくい環境を変えていきましょう。

複数人が関わる

 直属の上司とうまくコミュニケーションがいかず休職に入ってしまったという相談は非常に多いですが、一方で直属でない二次上司や同僚が異変に気づいて対処に繋がることも多いものです。

 接する回数を増やすと書きましたが、もし、直属の上司がストレッサーとなっていた場合、その上司とのオンラインMTGばかりが増えたらどうなるか?容易に最悪のケースが想定できますよね。

 オンラインのコミュニケーションは一方通行になりやすいのも特徴です。双方向ができていればもちろん良いのですが、双方向になっているか、他の人からはわかりません。

 複数の目が届く仕組みを作る必要があります。例えば、チャットもグループチャットを活用していくなどが望ましいでしょう。

現在発現しているものは氷山の一角

 

 労働者調査では「テレワークで不便且つ重要なこと」と思う順位の1位が「社内での気軽な相談・報告ができない」2位は取引先とのネット環境の違い、3位に「画面を通じた情報のみのコミュニケーション不足とストレス」という結果が出ています(※1)。

 「リモートワークで仕事の生産性があがったか」という別の労働者調査では、昨年より改善は見られるものの約5割の人が仕事の生産性、効率が下がったという実感を持っています(※2)。

 またコロナウイルスの感染症に対しての不安は、約7割の方が継続して感じているという数値が厚生労働省の調査でわかっています。

 リモートワーク環境が推奨されてもうすぐ1年になります。一時点での強烈なストレスではないものの、不調とパフォーマンス低下を感じながら見通しが立たないことへの不安やストレスに晒される状況が長期化しています。いつ、誰が、メンタルヘルスの疾患を抱えてもおかしくない状況が目の前にあるのです。メンタルヘルスにおける一番の課題は、本人が自覚をしづらいことなのです。

 本人が自覚したときには、すでに手遅れというケースがほとんどです。

 メンタルヘルス対策が、個々の社員の対応に追われ、常に個別対応をし続けるという時代は終焉したように感じています。

 いかに事前予防を行えいるか、組織活性化/生産性向上にダイレクトにつながっているか、ということが重要な時代に突入したと言えるでしょう。リモートワークの新しい環境に即した手法を取り入れ、第三者機関も活用し、より社員が活性化するような環境を整えることが必要です。

 今発現している問題は氷山の一角であり、メンタルヘルスダウンをしかねない予備軍が多くいるということを再認識してください。

※1 内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」

※2 公益財団法人日本生産性本部 第4回働く人の意識調査2021年1月

筆者紹介

P&L Associates 合同会社 アドバイザー  精神保健福祉士

橋詰 牧

青山学院大学卒。20代は飲食店マネージャー。メンタルヘルス業界に関心を持ち2010年精神保健福祉士資格を取得。精神科、生活保護のケースワークを経て2012年より企業内カウンセラー、第一種衛生管理者として社員相談、メンタルヘルス研修講師、ストレスチェック、障がい者雇用のコンサルティングに携わる。大手通信会社に所属する傍ら、個人でもカウンセリング、コーチング等を行っている。